読書メモ:世界一やさしいオプション取引の教科書一年生
はじめに
Web3技術や暗号資産に精通している人たちにとって、DeFiを使いトークンでオプション取引して暗号資産の暴騰暴落に備えるのは一般的かもしれません。
しかし、オプション取引自体、投資人口のまだまだ少ない日本では、認知度が低いのではないでしょうか。
暗号通貨のオプション取引ならば、DeFiトレーダーや関係者以外では高いハードルだと思います。
私自身も、オプション取引に関しては、調べてもわかりにくく、損失を被ると恐ろしいデリバティブ商品という先入観しかありませんでした。
オプション取引の方法を知っているとWeb3技術を学ぶにわたり役立ちそうなため、当書籍を購入し勉強することとしました。
この書籍を通して「オプション」とは何か、「オプションの取引方法」と「オプション取引戦略」を駆使して「安定的に収益を得る方法」および「損失をカバーする方法」をある程度理解することができました。
以下にて学んだことを、自分なりに咀嚼してわかりやすいように要約してみます。
※注意と免責事項
筆者自体は、オプションの初学者なため内容に誤りがある場合があります。
実際にオプション取引を行う際は、自身でよく調べた上で自己責任で行ってください。
オプション取引の売りでは、市場の暴騰・暴落時に損失が無限大になる可能性があります。
本記事によって損失が生じた場合は、当方では、一切責任を負えませんのでご了承ください。
オプションとは
オプションという名称が「オプションとは何なのか」をわかりにくくしている原因だと自分は思いました。
そのため、誤解を恐れず例えてみます。
オプションとは、株価の暴騰や暴落した場合、損失を補填してくれる保険みたいなもの・・・ではないでしょうか。
自動車保険を例にしてみます。
もし、あなたが自動車事故を起こしてしまって、相手を傷つけてしまったとします。
あなたは、多額の賠償金を相手である被害者に支払わないといけません。
そんな時に、自動車保険に加入していれば、その賠償金を補填するために、保険会社から保険金を受け取ることができます。
金融市場において、上記の自動車保険で言うところの事故とは、自分の持っている金融商品が、何らかの原因により「暴落」してしまった時と例えることができます。
例えば、2008年に金融市場で起きたリーマンショックのように金融機関が多額の負債を抱えて倒産した場合、日経平均株価全体が大幅に下がってしまう「暴落」が起こります。
結果不景気になり、倒産が起きたりして、日経平均株価全体はその後もしばらく大きく値を下げたままでした。
私たちは、オプションという保険を買うことで、このような暴落時に備えることができるというわけです。
また、「暴騰」の時にも同様に備えることができます。
株価が急激に上がる「暴騰」と聞いて、バブルのように景気が良くなると思うかもしれません。
実際のところ、「暴騰」は良いことばかりではありません。
例えば、株価が「暴騰」し、それによりインフレが引き起こされると、物価が上がってしまいます。
暴騰の結果、牛乳の値段が3倍になってしまったら、乳製品全般が高騰し買えなくなってしまいます。
買えないならまだマシかもしれません。
あなたが小売業のオーナーで大量に価格の上がった乳製品を仕入れる契約をしていたとしたら悲惨です。
お金が用意できなくて破綻してしまうでしょう。
オプションを使って、以上のような暴騰にも同様に備えることができます。
このように、暴騰暴落など市場の不安定化に備えることでできる保険のような投資商品がオプションです。
もう一つメリットがあります。
逆に市場で何も起きなかったらどうでしょう。
掛け捨ての自動車保険のように、保険料(プレミアム)のみが掛かります。
正直、何も起こらないことに越したことはありません。
しかし、オプションで支払う保険料は、払い続けると安いものではありません。
一方、保険(プレミアム)を売る側である逆の立場でも考えてみます。
あなたが自動車保険会社の経営者ならば、事故が少なければ少ないほど、毎月/毎年保険料を徴収して安定的に収益を上げられます。
なんと、オプション取引では、上記のように保険を売る側にもなれるのです。
金融市場が安定している場面において、オプションを売れば安定的に収益を得られるのです。
一方、大きなデメリットあります、もし暴騰・暴落が起こったら、あなたは保険屋さんとして多額の保険金を、オプションを買った人に支払わないといけません。
まさに、金融市場において保険の購入者だけでなく、保険を売る保険屋さんにもなれる便利な商品が「オプション」の真の姿なのです。
当書籍は、NIKKEI 225オプションについての書籍ですので、以下よりNIKKEI 225オプションを前提として述べていきます。
オプション取引(NIKKEI225)の種類
オプション取引(NIKKEI225)には、4種類あります。
上記の例え話をもとにして、簡潔に説明してみます。
他のサイトのようなグラフは使わず言葉だけで説明します。
①コールオプション買い
例えるならば、暴騰をカバーするための保険です。
もし、市場(≒日経平均価格)が暴騰すれば、多額の保険金を受け取れます。
ただし、保険料(プレミアム)を支払う必要があります。
市場で暴騰が起きなければ、支払った保険料分損します。
②コールオプション売り
例えるならば、暴騰した場合に保険金を支払う保険屋さんになれます。
市場で何も起きなければ、保険屋さんとして安定して保険料(プレミアム)を得られます。
もし、暴騰が起これば、多額の保険金を支払う必要があります。
③プットオプション買い
例えるならば、暴落をカバーするための保険です。
市場が暴落すれば、多額の保険金をもらえます。
ただし、保険料(プレミアム)を支払う必要があります。
市場で暴落が起きなければ、支払った保険料分損します。
④プットオプション売り
例えるならば、暴落した場合に保険を支払う保険屋さんです。
市場で何も起きなければ、保険屋さんとして安定して保険料(プレミアム)を得られます。
もし、暴落が起これば、多額の保険金を支払う必要があります。
以上、上記の4タイプから、後述する限月や権利行使価格を選んでオプションの売買を行います。
このように、多彩な選択肢があることからオプション(選択)という名称とのことです。
オプション取引用語の簡単な説明
NIKKEI225のコールオプションを前提になるべく簡単に用語を説明してみます。
- 証拠金(しょうこきん)
コールまたはプットオプションの売るには、SPAN証拠金額に基づいた証拠金が必要になります。
この証拠金は、コールオプション・プットオプションの売りにおける損失をカバーするために、事前に信用取引口座に入金する必要があります。
オプション売りでは、損失額が大きいため、よく当書籍の内容を熟読して、オプション売りをする際の預けている証拠金からポジション額を慎重に決定する必要があります。 - プレミアム
オプションにおける保険料のようなものです。平時において安定してますが、市場が不安定になると急激に値上がりするので注意する必要があります。 - 限月
保険でいうところの契約終了月のようなものです。限月の特定の日付に、そのオプションは強制的に決済します(オプションにはこのように終了日があります)。
自動車保険などは、契約期間という長い範囲で補償されますが、オプションでは限月のSQ算出日をもって確定します。
※NIKKEI 225オプションは、アメリカンオプションではなくヨーロピアンオプションです。ヨーロピアンオプションは、限月のSQ算出日まで権利行使できません。一方、アメリカンオプションは、限月より前に権利行使が可能です。 - SQ(特別清算指数)
SQとはスペシャル・クォーテーションの略で、「特別清算指数」ともいいます。
株式先物取引や株価指数オプション取引の最終決済を行うための価格です。
SQ算出日の前営業日が「取引最終日」となり、その日までに決済しない場合はSQ算出日に自動的に決済されます。
例えば限月が6月ならば、6月のある日付がSQ算出日となり強制決済されます。 - 権利行使価格
自動車保険で例えると、被害者に怪我をさせてしまった場合、保険金が支払われますが、
オプションにおいて、この保険金は、日経平均価格で決まります。
例えると、権利行使価格が日経平均18,000円のコールオプションが売っており、あなたは、そのコールオプションを買ったとします。
上記のSQ限月の所定の日時に、日経平均が20,000円となりました。
コールオプションの権利行使価格を超えているため、上記差額の2,000円(20,000円-18,000円)が受け取れます。
もし、上記のSQ限月の所定の日時で、日経平均が15,000円だとします。
そのコールオプションの権利行使価格より低いため何も受け取れません。
この場合、あなたは、このコールオプションを買うのに支払った保険料(プレミアム)分損します。 - 本質的価値
イメージしにくいかもしれませんが、2月に日経平均が15,000円だとして、その時にSQ限月が7月の権利行使価格18,000円のコールオプションを買ったとします。
時が過ぎ、SQ限月の7月となり、日経平均が20,000円だとします。
この権利行使価格を上回った2,000円(20,000 – 18,000 = 2,000)を本質的価値と言います。
コールオプションにおいて、日経平均が権利行使価格より上回れば上回るほど本質的価値が大きくなります。 - ITM (In The Money)
2月に日経平均が15,000円だとして、SQが7月の権利行使価格18,000円のコールオプションを買ったとします。
時が過ぎ、6月の時点で、日経平均が20,000円だとします。
この本質的価値が発生している状態を専門用語でITMといいます。 - ATM (At The Money)
2月に日経平均が15,000円だとして、SQが7月の権利行使価格18,000円のコールオプションを買ったとします。
時が過ぎ、6月の時点で、日経平均が18,000円だとします。
本質的価値がちょうど0円で権利行使価格と等しい状態を専門用語でATMといいます。 - OTM (Out f The Money)
2月に日経平均が15,000円だとして、SQが7月の権利行使価格18,000円のコールオプションを買ったとします。
時が過ぎ、6月の時点で、日経平均が16,000円だとします。
本質的価値が無く、権利行使価格に到達していない状態を専門用語でOTMといいます。 - 時間価値
2月に日経平均が15,000円だとして、その時にSQ算出日が7月で権利行使価格18,000円のコールオプションを30円で買ったとします。
18,000円以上にならなければ、このオプションに本質的価値はありませんが、30円で売っているのはなぜでしょうか?
これは、7月までに18,000円以上になるかもしれないという可能性に対する時間に対する価値です。
これを時間価値と言います。
時は過ぎ、SQ算出日に到達する前月である6月の時点で15,000円のままだとしてらどうでしょうか?
来月にSQ算出日に18,000円に届く可能性は低く、期待は時間とともに減っていきます。
相場に変動がなければ、このようなオプションは7月のSQに近づくにつれ、保険料(プレミアム)は0円に近づいていきます。
まさにコールオプションを買う側は、時間価値を保険料(プレミアム)として支払い、その分コールオプションを売る側は、時間価値を保険料(プレミアム)として受け取ることができます。 - HV(ヒストリカル・ボラティリティ)
日経平均の変動率を指標として表したものです。 - IV(インプライド・ボラティリティ)
オプション値動きから算出し、オプション・トレーダーの「慌て度」を表したものです。
保険料(プレミアム)に直接影響しているため、IV(インプライド・ボラティリティ)の方がオプション取引では重要になる場面が多くなります。 - ギリシャ指標
オプション取引で、使用する指標です。ギリシャ指標を使って保険料(プレミアム)の変化を予想することができます。
デルタ・・・・デルタを使って日経平均株価がいくら動いたら、どれだけコールの値段に影響するかがわかる
公式:(日経平均株価の変化幅)×(デルタ)=コールの値段の変化量
ガンマ・・・ガンマを使って日経平均株価いくら動いたら、どれがけデルタ値を押し上げ、コールの値段を増幅させるかがわかる
公式:(日経平均株価の変化幅)の2乗×(ガンマ)÷2=デルタからの影響の増幅量
ベガ・・・ベガを使ってIV(インプライド・ボラティリティ)の変化がどれだけコールのへ弾を押し上げるかがわかる
公式:(IVの変化量)×(ベガ)=コールの値段の変化量
セータ・・・一日たつと時間価値の減少でコールの値段をいくら減少させるかがわかる。
公式:(経過日数)×(セータ)=コールの減価量
オプション戦略
投資全般に言えることですが、戦略無しでは偶然的に勝てても継続的に勝つことはできません。
以下、当書籍に載っているオプション戦略の概要のみを述べます。
詳細は、当書籍を参考にしてください。
コール売り戦略
当書籍の柱となる戦略です。
コールオプションを売ることで、市場の暴騰時に保険金を払う保険屋さんになって、時間的価値である保険料(プレミアム)を安定的に得る戦略です。
筆者のコール売り戦略に基づくと、プット売り(暴落に対する保険を売る)よりもコール売り(暴騰に対する保険を売る)のほうが統計的にリスクを少なく抑えられるとのことです。
コールオプションであるなら、どの権利行使価格や限月でもいいわけではありません。
オプションの限月や権利行使価格の選び方は、当書籍に詳細に書かれているので参考にしてください。
また、恐ろしいことですが、暴騰は必ず起こります。
せっかく継続的に勝てていても、暴騰時にカバーする戦略が無いと、全ての利益を失ってしまう可能性があります。
そのために、損失のカバー方法として、カバードコールと両建てが当書籍では紹介されています。
- カバードコール・・・日経225先物を買って、コール売りの損失をカバーします。具体的には、NIKKEI先物と組み合わせてデルタ値のプラスマイナス0にします。
- 両建て・・・コール売りのポジションと同じ枚数、コール買いをします。これにより、急激な相場展開など判断が難しいときに損失を抑えます。
ニアプット買い戦略
少ない資金でトレードできるのがメリットです。。
簡単に言うと、様々な指標を駆使して、独自のトレードルールを立てて、日経平均価格が上がりきったところで、安いプレミアムのプットオプションを買い、日経平均価格の下落によってプレミアムが値上がりするタイミングでポジションを手じまいします。
このようにプットオプションのプレミアムを安く買い、高くなったら売ることによる差額で儲けます。
※書籍では、現在非推奨となっています。
詳細は書籍をご覧ください。
ファープット買い戦略
まさに、暴落時の保険に加入をするようなものです。
例えば現在、日経平均価格が20,000円だとしましょう。
権利行使価格および限月の遠い10,000円のプットオプションを安いプレミアムで購入します。
損失をヘッジ(カバー)したい場合か、暴落時に一攫千金を得たい場合に使います。
詳細は当書籍をご覧ください。
まとめ
当書籍を通して、よく理解していなかった自分でも、オプションの基礎を理解することができました。
しかし、基礎に重点を置いていることから、言葉の定義などで返って混乱する場面もありました。
例えば、ファープットやニアプット等が、筆者オリジナルの用語なのかオプションの正式用語なのか、どの程度でファープット、ニアプットなのか等は厳密に書かれていません(著者オリジナル用語のためでしょうか?)。
また、初心者向けでわかりやすくしているがゆえ、表現が多少回りくどい面もあるかもしれません。
初心者向けではあるものの、一般的な株取引と先物取引の知識が前提の内容でした。
しかし、Amazonレビューでは、評判がかなり良い書籍です。
本格的にオプションを学ぶには、他にも何冊か読む必要がありそうですが、オプション取引について最初に学びたいかたは、是非購入を検討してみてはいかがでしょうか?
その際は、当リンクから購入していただけますと助かります。
長くなってしまいましたが、ここまで読んでいただきありがとうございました。