読書メモ:数学ガール5 ガロア理論
『暗号理論と楕円曲線――数学的土壌の上に花開く暗号技術』をきっかけに、離散数学や抽象代数学のエッセンスをより深く理解したいと思い、『数学ガール』を読み始めました。そして、ついに抽象代数学を中心とした『数学ガール5 ガロア理論』にたどり着きました。
今回の内容は、すべてが最終章のガロア理論へと収束していく構成になっており、特に最初にユーリちゃんと取り組む「あみだくじ」を群で表現するパートが、重要なポイントとなっていました。私はそこを油断して、比較的さらっと読み進めてしまったため、後半でかなり苦戦することになりました。2次・3次方程式の解の公式の証明も含め、すべてがガロア理論へと繋がっていくので、心して読むことをおすすめします。
また、角の三等分の作図不可能性の証明もかなり難しく感じました。主人公の「夜なべ勉強パターン」は、毎回のことながら、かなりハードです。
複素平面とベクトルの計算が似ていると前々から思っていましたが、線形空間という視点から抽象的に眺めると、確かに同じように見えるという発見がありました。そこからさらに「拡大体」という体の拡張へと繋がっていく流れが、新鮮でした。
そして最後のガロア理論の章では、あみだくじのケイリーグラフを「例示は理解の試金石」にして、ガロア群の縮小と、係数体の拡大との関係が、方程式が代数的に解けるための必要十分条件へと繋がっていく――という展開で、それまでの点が一気に線となり、カタルシスを感じました……と言いたいところですが、正直、300ページから430ページまでは完全に理解が追いつかず、10ページ読むのに1時間以上かかる場面もありました(笑)。
これは、何度も立ち止まって調べたり、実際に手を動かして計算したりしないと、「理解した」と言えるレベルにはなかなか到達できないと痛感しました。ゲーデルの不完全性定理と同様に、非常に難解な内容でした。
一方で、ストーリーについてはネタバレを避けますが、今回は数学議論のなかでテトラちゃんが「独りぼっちの∛2」になる以外は、比較的安定した展開でした。舞台は高校3年の夏、受験勉強真っ只中のはずですが、登場人物は皆トップクラスの成績なので、余裕があるのでしょうか。
そもそも主人公は、勉強の息抜きに数学研究をするのが趣味という人物なので大学受験は余裕のようです。個人的には、コンピュータ少女・リサちゃんの出番が少なかったのが少し残念でした。
そして次巻は『ポアンカレ予想』。すでに購入済みなので、さっそく読み進めたいと思います。トーラスなどは楕円曲線暗号とも密接な関係があるようなので、自分に理解できる範囲で、引き続き学びを深めていきたいです。