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読書メモ:英日実務翻訳の方法



はじめに


英語学習は、海外から技術情報の調査、トラブルシュート、英会話等、ITエンジニアをしていると役立つ場面があるため、日々ルーチンとしてやっている方は多いのではないでしょうか。

一方、いざ翻訳をやってみると直訳調になったり、不自然な翻訳になることがあります。

現在ボランティアで行っているオープンソースの翻訳でも、時間をかけて翻訳しても採用されなかったり、プロのレビュー後の文を見ると、自分の翻訳とのレベルに差を感じたため、英日実務翻訳の方法を購入して学習しました。

翻訳学校の教材として当書籍は使われているとのことです。

以下、役にたったことのポイントをまとめます。



英日実務翻訳を学ぶ前に知っておきたいこと


1. ユーザーマニュアル・技術情報提供・広告・会社案内で必要な翻訳要件は何か?

  • 曖昧でなく明確な表現で一義的に理解できる
  • 日本語として自然な調子で表現され、読みやすい
  • 簡潔な表現で理解しやすく、記憶しやすい


2. 翻訳者として求められることとは何か?

  • 継続学習:定期刊行物を日々読む (NIKKEI WEEKLYなど)
  • 英語力の証明:TOEIC (800程度が望ましい) 、英検などで最低限の英語力が証明できる
  • 調査力:限りある時間の中で、素早くインターネットなどを通して信頼ある情報を調査できる
  • 日本語力:読書経験、ただ読むのではなく表現に対して批評の眼をもって読む

3. 直訳か意訳どちらか?

直訳すると意味的には正しいが、意訳にすると意味が歪められることがある。

直訳がわかりにくければ、原文を意味的情報が等価な意訳をすることが必要です。

適語・正語をみつける

まず、適語正語を見つける必要があります。この本で言うところの適語と正語の意味は載っていませんでしたが、内容から以下意味であると推測しました。

  • 適語・・・文章にとって適切な意味の訳語
  • 正語・・・一対一で割当てられる訳語(専門用語など)


適語正語を以下の用語の分類を行って訳を調べる必要があります。

用語の分類ですが、下に行くほど現場感が強く、翻訳依頼者に直接聞く必要があります。

一般用語は、適語として適切な訳を選ぶ必要があります 。

用語を分類することで、円滑に顧客とのコミュニケーションが実現でき、翻訳作業を進められると思います。

用語の分類

  • 一般用語・・・さまざまな辞書を駆使して最も適切な訳(適語)を考える
  • 専門用語・・・専門的な用語のため、一語一訳となる(正語)
  • 準専門用語・・・専門家や専門書で使われている用語。翻訳には、専門分野を知っているか、専門性が必要。翻訳家の専門性を発揮できる(正語)
  • 特殊語 (Jargon) ・・・現場で使われている業界用語。例えば、自動車製造工場では、エンジンの組み立て後のテストを「green run」といいます。特殊語は、依頼者に正しい訳を聞くしか手立てがありません(正語)

概念訳と説明訳の使い分け

日本語翻訳のタイプには、概念訳と説明訳の2種類があります。


例)The disk is not sufficient for its program installation space requirements.

概念訳:そのディスクは、プログラムのインストール容量要件にとって十分ではない。

説明訳:そのディスクには、そのプログラムをインストールするのに必要な、十分な容量がない。


直訳調の概念訳がふさわしくない場面では、説明訳を使います。説明訳は、読み手が理解しやすい文調になります。

説明訳は、説明文などに適していると感じました。また、概念訳は文章としてコンパクトになる特性があります。

概念訳は、タイトルなどに適していると感じました。「プログラムのインストール容量要件」等。

正順訳を応用する

英語から日本語への訳し方として逆順訳正順訳があります。

私たちが、学校で習う英語の和訳の多くは、逆順訳です。

逆順訳は、英文を後ろから日本語に訳していきます。

正順訳は、英語を先頭から日本語に訳していきます。


例)The system operation record indicates a significant increase over the last two years in downtime of the system that was introduced into the company a decade ago to enhance its overall productivity.

逆順訳:システム運用記録は、全体的な生産性を向上させるために 10 年前に会社に導入されたシステムの、ダウンタイムが過去 2 年間で大幅に増加したことを示しています。

正順訳:システム運用記録が示しているところでは、そのサーバーのダウンタイムが最近 2 年間にわたって著しく増加している。ただし、そのシステムは、会社の全般的な生産性向上のために導入されたものである。


このように、文を先頭から訳す正順訳を使うことで、読みやすく意味を明確にすることができます。

長い文での読みやすさの実現には、正順訳を取り入れることが必要です。

その他、BeforeやAfterなど他の接続詞などを用いた正順訳の実例については、当書籍に豊富に記述されているので参考にしていただければと思います。



文章の流れをつくる

英文を、そのまま日本語に訳すと文の前後関係に流れがなくなることがあります。

それを防ぐために接続語句を付加して、因果関係を明確にします。

それには、原文の論理的転回を正確に掴むことが必要になります。


例)The key problem is that the patient’s body is a complex volumetric structure: an assembly of tissues and organs which intermingle and combine in three dimensions.


ここでは、コロン「:」を同格の関係をはっきるさせるために「すなわち」と訳します。

訳例:主として問題となることは、患者の体は、複雑な立体構造を持っていることです。すなわち、組織と機関が3次元で絡まり合い結合し合っている集合物だからです。


一方、「It’s rainning:雨が降ってる」のように「It’s」を日本語に訳する必要はありません。

さまざまな英語表現を日本語訳では、省くことができます。

実例については、当書籍に豊富に記述されているので参考にしていただければと思います。

私たちが、学校で習うような日本語訳方法ではなく、読み手に伝わるように強調語句を追加したり、接続詞を追加したりして、読み手が読みやすく訳を考える必要があります。

文体を適正化する

求められる翻訳によって文調が変わってきます。

「です、ます」や「である」調、一文の長さ、概念的な表現、説明的な表現を使い分けます。


1. ユーザーマニュアル



「です、ます」調が望ましい。また、説明的な表現を使う。

実例は書籍に載っています。


2. 販売カタログ

「です、ます」調が望ましい。見込み客を対象にしているため説明的な表現を取ります。

実例は書籍に載っています。

3. アニュアルレポート(年次レポート)



「です、ます」。投資家やアナリストだけでなく一般的な広報としても使うのでわかりやすくします。

実例は書籍に載っています。

4. 専門雑誌記事

「である」調。業界紙・学術誌に大別される。専門家向けですが、文体はわかりやすくする必要があります。

実例は書籍に載っています。

5. 特許明細書

発明について明確にするため、技術的細部の正確な表現が必要です。実例は書籍に載っています。


6. その他

その他、契約書、規格書、論文など、多岐にわたり、実例が当書籍に載っています。
興味ある方は、当書籍をご覧ください。


現代日本語表現法を知る

出版社などで定められている、現代表記法に従って書くことで表記を統一することができ、翻訳の品質を保つことができます。


英語では標準表現があるようですが、日本には国が定めた標準表現は無いとのことです。


1. 形容詞

漢字ではなくひらがなを使う。

  する為に → するために

  する事 → すること

2. 動詞


漢字ではなくひらがなを使う。

  出来る → できる

3. カタカナ表記


3つ以上の英単語の組み合わせは「・」を入れる。
  ケースバイケース → ケース・バイ・ケース


       ・・・等々(他は、英日実務翻訳の方法を参照ください)



まとめ


以上、コンパクトにまとめましたが、当書籍から実務翻訳で必要な実践知識を得ることができました。

また、自己流になりがちな翻訳作業を様々な技法を駆使してわかりやすくすることができるヒントを得ることができました。

翻訳学校の教材として使われているくらいなので非常に有益な内容となっています。

実務翻訳に興味ある方、会社で翻訳を任されている方は、是非、英日実務翻訳の方法ご購入ください。



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