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2023年5月ethereum.org日本語記事リリース情報②(スケーリング系)




はじめに

当月も多数のethereum.org翻訳ボランティアの貢献により、多くの日本語記事がリリースされました。


今回の内容としては、先月に引き続き難易度の高い記事ですが、イーサリアムのスケーリングについての内容となります。

イーサリアムのユーザー規模が拡大するにつれ、イーサリアムブロックチェーンの処理能力は限界に達しつつあります。

これにより、イーサリアムネットワークの使用コストが増加しているため、「スケーリングソリューション」の必要性が高まってきました。 

分散化やセキュリティを犠牲にすることなく、トランザクション速度の向上(ファイナリティ到達までの時間短縮)ならびにトランザクションスループットの向上(毎秒あたりの処理件数の向上)を実現するためにオプティミスティック・ロールアップやゼロ知識ロールアップなど様々なスケーリングソリューションが誕生しています。


本年、エアドロップで賑わせたArbitrumや、Optimismなどはオプティミスティック・ロールアップによるレイヤー2スケーリングソリューションになります。

是非、背景知識の習得にご一読ください。



新しくリリースされたスケーリング系の記事一覧


1. オプティミスティック・ロールアップ

オプティミスティック・ロールアップは、イーサリアム(ベースレイヤー)のスループットを拡張するために設計されたレイヤー2プロトコルです。

トランザクションをオフチェーンで処理することで、イーサリアムメインネットの負荷を軽減するため、処理速度が大幅に改善されます。

オプティミスティック・ロールアップは、サイドチェーンのような他のスケーリング・ソリューションとは異なり、トランザクションの結果をオンチェーンで公開することによってメインネットからセキュリティを引き出します。


2. ゼロ知識ロールアップ

ゼロ知識ロールアップ(ZK ロールアップ)とは、計算および状態保存をオフチェーンで実行することで、イーサリアムメインネットのスループットを向上するための、レイヤー2のスケーリングソリューションです。

ZK ロールアップは、数千件のトランザクションをバッチ処理した上で、最低限のサマリーデータのみをメインネットに書き込みます。

このサマリーデータには、イーサリアムの状態に対して変更すべき事項の定義と、それらの変更が正しいことを示す暗号学的証明(有効性証明)が含まれます。


3. ステートチャネル



ステートチャネルは、ユーザーに対して、イーサリアムメインネットとのやりとりを最小限に抑えつつ、トランザクションをオフチェーンで安全に実行できる方法を提供します。

チャネル上のピアは、当該チャネルをオープン/クローズするための 2 つのオンチェーンのトランザクションを送信するだけで、任意の数のトランザクションをオフチェーンで実行することができます。

これにより、トランザクションのスループットが大きく改善され、ユーザーの手数料が軽減できます。


4. サイドチェーン

サイドチェーンとは、イーサリアムから独立して実行され、双方向のブリッジによりイーサリアムメインネットに接続されている別個のブロックチェーンです。

サイドチェーンは、メインネットとは異なるブロックのパラメータおよびコンセンサス・アルゴリズムを持つことができ、多くの場合トランザクションの効率的な処理のために設計されています。

しかし、セキュリティのトレードオフがあります。この記事では、詳しくサイドチェーンについて述べています。



5. プラズマチェーン

プラズマチェーンとは、イーサリアムメインネットに固定されているものの、独自のメカニズムに基づいてブロックを検証し、オフチェーンでトランザクションを実行するメインネットとは別個のブロックチェーンです。

プラズマチェーンには多くの制限があります、このため近い将来制限の少ないシャーディングが使えるようになる予定です。

上記、シャーディングとプラズマチェーンの比較やレイヤー2とプラズマチェーンとの比較が大変勉強になります。



6. バリディアム

バリディアムは、 ゼロ知識ロールアップのような有効性証明を使用してトランザクションの完全性を強化するスケーリングソリューションです。

トランザクションのデータがオフチェーンなので、イーサリアムのメインネットに保存されません。

オフチェーンなのでデータ可用性が低下するというトレードオフが存在する一方で、スケーラビリティが大幅に向上します。

なんと、バリディアムでは、1秒間に9,000 件以上のトランザクションが実行可能です!



まとめ



以上、2023年5月にリリースされたドキュメントの一部を紹介しました。

今回は、現在最もイーサリアムで熱い分野であるスケーリングの技術的記事についてご紹介しました。

当月も、数多くの翻訳ボランティアの協力もあり、様々な日本語ドキュメントがリリースされています。

次回は、イーサリアム標準(ERC)関連の記事のリリース情報をご紹介します。

また、今月新たに多くの(未翻訳の)記事が追加されています。

しかし、翻訳は一人の人間では少ししかできません・・・

ドキュメントを最新に保つには、多数の翻訳ボランティアの協力が必要です。

そのため、ethereum.orgでは、翻訳ボランティアを常に募集しています。

翻訳ボランティアに興味をお持ちのかたは、こちらを参考にしてください。

翻訳ボランティアへの参加、心よりお待ちしております。


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