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読書メモ:暗号技術入門 第3版



結城浩先生の『数学ガール』シリーズが思いのほか分かりやすかったことから、『暗号技術入門』も購入して読んでみることにしました。

これまで、情報セキュリティスペシャリスト試験の対策や、Web3全般、ブロックチェーン技術の勉強などを通じて、暗号技術に関する書籍をかなり読んできました。そのため、副題に「秘密の国のアリス」とあるのを見て、「アリスが大冒険を繰り広げるような物語調の初心者向けの内容なのだろう」と思い込み、これまでは手に取っていませんでした。

ところが、実際に読んでみると想像とはまったく異なり、非常に細部まで丁寧に整理された、わかりやすく本格的な暗号技術の解説書でした(物語的な要素はありません)。ちなみに、「アリス」や「ボブ」といった名前は、暗号技術の説明でよく使われる架空の人物名であり、『不思議の国のアリス』のような物語的展開は一切登場しません。

特にわかりやすかったのは、「ブロック暗号モード」についての説明です。SSL/TLSといった通信技術での利用方法も、改めて確認することができました。また、RSAに関しては数学的な視点から丁寧に解説されており、その仕組みに対する理解が深まりました。数学にあまり自信のない方でも、『数学ガール』シリーズを読めば理解が進むのではないかと思います。

さらに、PGP(Pretty Good Privacy)についても一定のボリュームで解説されており、「認証局」とPGPにおける「信頼の網(Web of Trust)」の比較を通じて、それぞれのメリット・デメリットを整理することができました。

終盤では、ブロックチェーンや量子暗号といった最新のトピックにも触れられています。個人的には、「量子暗号」と「耐量子暗号」という名前が似ているため混同していましたが、本書を通じて、量子暗号は量子技術を用いた暗号であり、耐量子暗号は量子コンピュータでも解読が困難な暗号であることを理解できました。最後には、楕円曲線暗号についてのわかりやすい数学的な解説も付されており、理解のレベルがさらに深まったと感じています。

暗号は、数学的にも技術的にも非常に難解であり、登場する技術や構成要素(コンポーネント)も多く複雑ですが、本書にはそれらの情報がしっかり詰まっており、IT業界で働くエンジニアにはぜひ読んでほしい内容です。

以前読んだ、Amazonなどでよく比較されている『図解即戦力 暗号と認証のしくみと理論がこれ1冊でしっかりわかる教科書』は、ややこちらより平易な内容で幅広くカバーされていますが、こちらも非常に有用でした。著者が異なることで同じ技術でも異なる視点から学ぶことができますし、どちらも非常にわかりやすい良書だと思います。2冊をあわせて読むことで、より理解が深まると感じました。

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